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時間壁面の泡が緩やかに消滅して通常観測系が徐々に再開されていく。
環境表示には瞬きのない静かな宇宙空間が広がっている。
壁面自体が短モードのひも長を下回った刹那、耳朶を突き抜けて顎下に向かって刺激が走ると同時に視界に警告マークが合成されて見えた。
「045-070方向から準光速ビーム接近。接触時-3.00s。クリスタルビーム/低温高エネルギー密度と推測(重力波2次異常散乱/ニュートリラーノ変換3階遅延ピークによる仮想テーパーレーザー検出)。時間壁面希釈緊急停止」
イオントラップ生成誘導にKaldレーザー・出力密度優先でカートリッジ一つ分照射を指示、時空泡を該当方向に生成開始、それに伴い時間壁面密度が045-070方向に一気に傾斜する。

接触。この距離で3次元のままわたってきた強力なひも状のクリスタルビームも遮断面として機能する密度になった時間壁面で一気に相転換して場が消滅。かわりにごっそりできかけの時空泡のエネルギーを食べて壁面を様々な物質に変わって流れ、壁面が保持しきれず放射光を放ちながら削り取る。壁面がプランク長さを下回った後ろ側に回折して艇体に近づくが保護電磁場との相互作用に絡め取られ、プラズマに拡散して熱放射の末路をたどった。

相互作用が艇体保護レベルを下げて運動量を変化させられるようになるまで100秒以上。壁越しの観測ではもう一手うたれた可能性は低いので、おそらくは足止めか。