Mezzo Trio Frontier
ここから4年だと、中央導管のへこみへ指先を置いて彼はいった。
「だいたいだけど。へこんでない房も戻ってきてるから」
ほら、と置いている指を見るように合図をよこす。
私は素直に合図に従って視線をやった。導管の銀被膜にうつりこんでいる彼の指の影が瞬き、指が光に貫かれているように見える。やがて空間そのものの折り目がそうみえていることに気付くまでじっとながめ続けていた。
Contact point
相を変えて降り注ぐ、那由多に分かたれた雲だったもの。熱交換過程の抑制までもが起きない紫光に彩られた空から霧、霧を押しのけるようにたたき付けられる雨滴、コールドボイドと水平乱流のミキサーを通り抜けて砕けた薄氷に変わった雨滴。足下で早々と気化していく液体と固体。
tffl
ゼノピシック。
涯から離れていく淵。
Crane five
カメラモデルを有効だと判定させたまま位置補正をある程度だまそうと、RPの光切断法プロファイラ片側からのスリット光照射場所に応じて表面下制御グリッドに荷電し、透光率を一部だけ変化させる。おそらく失敗。エピポーラ拘束条件を飛ばして初期条件へ暫定移行したか、プロファイラの照射が左右同時になった。場所を把握されたRPの先行突破をあきらめる。
蒼い神立雲
差異の存在が齟齬を生むわけではなくとも、齟齬によって解消不可能な差異を抱え込んだ個体の慰みにはならない。もしくは慰みなど要らない。自らによって到達した状況には違いない。
軋みのない広がりと、あまりにも多くの差異すら同定されるほどに粗い最小単位。軋みのない広がりを要求する個体に、差異の集約を起こす世界、のようなもの。いつまでも示唆されるのみの状況。
宣託されうる権威
それをつくりましょう。つくるうたをうたいましょう。よぶうたをうたいましょう。それはあなたのささえ、しちゅう、よりどころ、ぜったいしゃ、きょうかいせん、かみ、しこうそんざい、どのようななでよぼうともじゆうです。あなただけのそれを。いくつかのじょうけん −それはあなただけのでしかなく、あなたにしかえいきょうもおよばない。それはあなたじしんやあなたのうつしではなりたたない。あなたとかさなってしまわないように− をまもればきっとあなたはそれをつくることか、よぶうたをつくれるでしょう。そして、いつか、あなたがすべてをおえるときまでにはうたうことができるでしょう。
だから、それがどんなものであろうとも、それのありようはあなたののぞみなのです。そのものではなくても。