stone stone

白い世界。ぬるい寒気をのせた風に雪が吹かれておちていく。
冬の残り、春の雪。水気の多い雪が踝あたりまで積もっていて、歩みを進めるたびに、べちゃ、べちゃ、と嫌な音を立てた。
先週の暖かさで蕾を付けた梅の木は、時々思い出したように枝を揺らして雪をばさばさと落とす。
雪の日は静かだけれど、一つ一つの音がとても鮮明だ。

視界を遮る、降り積もる雪をなぜか不快に思って足下に視線をおろして歩き続けた。
やがて、足下に見える雪から模様が消え失せ、視線を上げれば、見渡す限りの白い、空。
いつの間にか降る雪はなくなり、地形は平原になり、地平線はぼやけて、初めて自分に意識が戻る。

唐突にわき上がる恐怖に突き動かされ、足をひたすら進めて、どこかへと、どこかへと、歩き続けて。
そのまま。